保険者による紛争蒸し返しを許さなかった裁決 

再審査請求 裁決集

行政文書情報販売店様より購入した、令和4年裁決取消集(不服申立て2審目の再審査請求で、取消=容認裁決を集めたもの)より。

事件番号は、令和4年(国)第34号です。

事案について

概要

再審査請求人が、未支給年金の請求したら、保険者が、5年より前の部分は消滅時効を援用して支給しない処分をしたことを不服とした事案です。

同請求については、すでに保険者が同一の先行処分をしていたが、社会保険審査官により先行処分が取り消されたという経緯があります。

つまり、保険者による事務処理誤り主張不十分のため、消滅時効援用を否定した審査官決定について、保険者による同一処分(時効消滅の援用)をしたが、紛争蒸し返しとし許さなかった裁決となります。

経緯概略

先行処分

請求人の妻は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給していた。振替加算については、請求をしていなかった。

そこで、請求には、加算自由該当届を提出し、振替加算分の未支給年金の請求をした。

これに対し、保険者は、振替加算の支給決定と、消滅時効により5年より前の部分は市貼らない決定をした【先行処分】

審査官決定

これに不服とした審査請求において、審査官は、先行処分を取り消す決定をした。その理由は以下。

請求人は、振替加算の支給漏れは、請求人の責任ではなくて日本年金機構の事務処理誤りに起因と主張。
これに対し、保険者は、事務処理誤りの認定について具体的な意見を確認することができず、審査官は事務処理誤り認定の適否を核にすることができないから、時効の援用が適切に行われたものであるかについて判断するのは困難と言わざるを得ない。

保険者の、再処分

これに対し、保険者は、審査官はこのように述べていますが、現時点で時効を援用したことが不適法であるとの判断はされていません。時効を援用したことが援用したことが適切であるか否かを検討しました。保険者が席に問われるような事情は見当たらないから援用することにしました。

審査会判断

審査会は、このような保険者の処分は、社保審法16条に反し許されないとしました。

他の裁決だと、審査会は、「妥当でない」として処分を取り消していますが、本件は「違法であるので」として、処分を取り消しています。

時効援用を許さない例について書かれた通知

裁決で出てきた、「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付を受ける権利に係る消滅時効の援用の取扱いについて平成24年9月7日年管発0907第6号」の通知は必見です。下線部分をクリックすれば日本年金機構サイト内の通知に飛びます。

この裁決を踏まえ、代理人としての姿勢

保険者による時効援用について、事務処理誤りだから時効を援用すべきでないと不服申立てに主張する場合は、この裁決例や上記通知をつけましょう。
そうすると保険者も事務処理誤りかどうかについて、具体的な意見を述べざるを得ませんし、
仮に事務処理誤りを否定する具体的な意見を述べない場合は、追加の審査請求書を提出して、取消決定をすべきであることを主張することとなります。