障害年金の決定に不満の場合、いきなり訴訟に進むことはできず、まずは不服申立てという制度に進む必要があります。
不服申立ては2審制で、審査請求、再審査請求とあります。
1審目の、審査請求については、以下の記事をご確認ください。
今回は、2審目の、再審査請求について説明します。社労士や弁護士に依頼せずに、ご自身で再審査請求をやる場合に、ぜひ参考にしてみてください。
障害年金の”再審査請求”の手続き
再審査請求か、それとも、提訴か
審査請求の棄却決定を受けて、やっぱり納得いかない場合、次に進むことを考えます。
次には、2通りあります。
再審査請求か裁判です。
再審査請求に進まずに、そのまま提訴(裁判)に進むこともできます。
なお、審査請求を省略していきなり裁判に進むことはできません。
また、審査請求して、2か月以内に社会保険審査官による決定書が届かない場合に、棄却したとみなして、つぎにすすむことができます。
そのため、不服申立ての流れとして、以下の4パータン考えられます。
1.審査請求→社会保険審査官による棄却決定書→再審査請求(→提訴)
2.審査請求→社会保険審査官による棄却決定書(→再審査請求飛ばしての提訴(裁判))
3.審査請求→2か月たっても決定書とどかず(みなし棄却)→再審査請求(→提訴)
4.審査請求→2か月たっても決定書とどかず(みなし棄却)(→再審査請求飛ばしての提訴(裁判))
1の方が多いかと思います。
再審査請求書提出(決定書届いてから2か月以内。※期間厳守)
社会保険審査官による、棄却決定書が届いてから2か月以内に、社会保険審査会に対して、
再審査請求書を提出します。
提出先住所は以下です。
〒105-0003
東京都港区西新橋一丁目1番1号 日比谷フォートタワー8階
電話 03-5253-1111(代表)
再審査請求書の書式は、厚生労働省のサイトにありますので、利用してみてください。
再審査請求書には、裁定請求や、審査請求のときに提出した書類や、審査請求の決定書は、再審査請求人が提出する必要はありません(社会保険審査会に対し、日本年金機構や社会保険審査官が提出して、集まるためです)。
公開審理出欠を決める
上記1の再審査請求書を送付して、半年以上経過すると、公開審理の日程の案内が届きます。
なお、障害基礎年金の場合、火曜日の午後、障害厚生年金の場合、木曜日の午後となります。
公開審理参加は任意です。
公開審理の会場は、上記、社会保険審査会(西新橋の日比谷フォートタワー8階)にあります。
公開審理の案内は、期日の1か月くらい前に、書類で日程の連絡があります。その書類の中には、分厚い書類(通称「事件プリント」)と、出欠のはがきが届きがあります。
出席する場合、しない場合いずれにおいても、出欠のはがきは提出しましょう。
体調の問題で出席できないかもしれない場合は、いちおう出席としておき、当日体調不良の場合は、社会保険審査会に連絡して欠席の旨伝えます。
保険者意見に対する反論
公開審理出欠はがきの中に入っている、分厚い書類(通称事件プリント)の後ろの方に、「保険者意見書」というものがあります。つまり、処分をした日本年金機構が、どうしてそのような処分をしたかの理由が書いてあるものです。
その中身を精査し、反論したい部分がありましたら、再審査請求書追加理由書として、社会保険審査会に提出します。
どうやら、社会保険審査会は、公開審理前に、うちうちで委員会メンバーで審理の案件を検討するので、できればそれに間に合うように、事件プリントが届いたらすぐに保険者意見を読み、できるだけ早く追加理由書を提出しましょう。
公開審理当日
そもそも公開審理に出た方が良いのか、を考えるために、公開審理の中身を説明します。
なお、傍聴もできるので、自分の期日の前に、傍聴して現場の雰囲気を感じるのも良いかもしれません。
会場の座席配置

会場は、20畳くらいの部屋で行われます。
左側黒丸3つは、社会保険審査会の委員3名が座っています。
上の黒丸3つは、厚生労働省側で、医師1名、事務員1~2名です。
下の黒丸2つは、再審査請求人と、代理人がいる場合は代理人です。
右側のうちの、左側黒丸3つは、参与です。人数は3名以上で、バラバラです。
一番右の黒丸2つは、傍聴者です。傍聴者がいないこともあります。
傍聴者以外には、各人の前に長テーブルがあります。
なお、社会保険審査会委員3名のうち、真ん中の人が委員長で、委員長が司会進行をしていきます。
公開審理で何を話すのか
司会役の委員長から、再審査請求人に「何かありませんか?」と聞かれます。
では、何を話すかについて、ここで書いていきます。
口頭意見陳述のやりとりを保険者(厚生労働省職員)に確認する
まず、審査請求で口頭意見陳述に出席していたのであれば、口頭意見陳述のときの厚労省とのやりとりを書いた書面を、審査請求の口頭意見陳述後に出します。もし出していなければ、再審査請求書に出しておきます。
厚生局によっては、社会保険審査官がやりとりを書いたものを作成してくれるため、これらは不要になりますが、してくれない厚生局もありますので、自らがやります(なお、私がほぼ審査請求書を出している関東信越厚生局では、作成してくれません)。
そして、公開審理の場では、この口頭意見陳述の記録を、保険者(厚生労働省の職員)に、この内容であっているか?と確認します。要するに、口頭意見陳述での会話を、言った言わないの争いを避けるためです。
保険者に質問をする
審査請求での口頭意見陳述でも保険者に質問ができますが、そのときに質問漏れていた事項や、保険者の回答を受けてあらたに疑問が生じた事項などを、保険者に質問をします。主に保険者(厚生労働省)側の、事務官ではなく、医師に対して質問をする事が多くなるでしょう。
その回答を受けて新たに疑問が生じたら、質問をしましょう。
この質疑応答内容は、自分でしっかりメモを取っておきます。
他に何を話すのか
質問以外に何を話すかについて。
たとえば、自分の病気がいかに重いか、症状や日常生活を話すことが考えられます。
しかし、司会役の社会保険審査会委員長が
「言いたいことがあったら(口頭で言わずに)書面で書いてください」
「すでにこれまでの書面で書いてきたことは言わないでください」
と言ってくることがあります(常に言っているわけではないのですが・・・)。
そうなると、結局のところ、保険者への質問が中心になるかと思います。
その他、参与や審査会委員から保険者・再審査請求人への質問
前述の通り、委員長は、「再審査請求人に何か言いたいことがありますか?」と言って、再審査請求人が主張(上記、保険者への質問含む)が終わると、
委員長は、参与に同じように、何か言いたいことがないか聞き、参与は、何もないというか、または、自らの意見を言うかします。
また、参与や委員長、委員から、保険者に対して質問があります。
参与や委員長、委員から、再審査請求人に対して質問があることも少ないですがあります。
もし、質問されて、その場で回答できない場合、無理矢理あいまいな事を話さずに、
「回答は、近日中に、書面で提出します」、としましょう。
所要時間
一人あたりの持ち時間が決められているわけではありません。
だいたい15分~30分程度で終わることが多いです。
服装
出席する代理人社労士はスーツが多いですが、一般の方は、普段着が多いように思います。特段スーツでなくても良いかと思います。
公開審理まとめ
以上が公開審理のまとめです。公開審理日程の案内書にも、欠席をもって不利に扱わないとありますので、体調や交通費の負担、保険者の疑問点や、(裁判をしない場合は)最後だからできるだけのことをしたいなどのお気持ちなどを天秤に掛けて、出欠を考えましょう。
また、公開審理は録音して記録されており(「審理調書」といいます)、公開審理後、記録をもらうこともできます。
公開審理後、追加書面(任意)
公開審理を受けて、そのときの内容で、言い足りないことがある、付け足したい資料がある、となった場合、早めに、追加書面を、社会保険審査会に提出します。
公開審理の場で、あらかじめ、追加書面を出す予定があると判断した場合、その場で委員長に、「追加書面を出したい」意向を伝えます。そうすると期日を設定されますので(だいたい短い期間)大急ぎで出しましょう。
裁決書到着
公開審理に出席しても欠席しても、そこからすぐには結果が来ない事が多く、半年以上待つこともあります。
棄却となった場合に、裁判に進むかどうか、この待っている時期に予め考えておきましょう。
裁決の内容は、審査請求同様、主に、
容認→再審査請求人の不服を認める
棄却→再審査請求人の不服を認めない
があります。棄却の場合、主文が「棄却」と書いてあるのでわかりやすいですが、
容認の場合、主文に「取消す」とあるので、一件わかりづらいですが、要するに、原処分が誤りだから取消しますということです。
もっとも、「取消す」とあっても、
・最初の不支給決定に対し、1級を目指していたのに2級だけしか認めなかったり、
・厚生年金加入中の初診日は不明だから却下の原処分に対して、国民年金加入中の初診日は認めるなど、
一部容認もあるので、
こちらの主張が全て認められたかどうかは、中身を読んでいく必要があります。
原処分変更
保険者自らによる、原処分変更があるのは、審査請求同様です。
最後に
以上が、手続の流れになります。任意の手続きも多く、最大限省略すると、
「社会保険審査官から棄却決定書到着→再審査請求書提出→裁決書到着」
となります。なんとなくイメージしてもらえたら幸いです。
この再審査請求一連の流れは、1年以上かかることも多いです。
とくに精神障害の場合、不服申立てが多くて公開審理が詰まっているため、他の障害に比べると時間がかかっています。
そのため、審査請求とあわせて2年近く係ることもあります。
余談(言葉の誤解)
ご相談者の中には、不服申立て関係の言葉を間違っておられる方がいるので、以下、例をあげさせていただきます。
×「異議申立て」 → 障害年金だと「不服申立て」が正しいです(他の制度では「異議申立て」という用語を使うものもあります)。
×「再審請求」 → このような言葉は障害年金の手続きにはないです。「再請求」(申請をもう一度すること)と再審査請求(本記事のもの)の混同と思われます。
×一審目が「再審査請求」 → 裁定請求で一度原処分の決定を受けていることから、二番目の審査というイメージのためか、不服申立ての一審目を「再審査請求」と仰る方もいますが、不服申立ては、「審査請求→再審査請求」となります。
以上、言葉を間違うと、相談する社労士弁護士に、相談者が何をしたいのかを理解してもらうのに時間がかかってしまうかもしれないので、できれば正確な言葉をわかって使っていただけたらと思います、
田口法律事務所・田口社会保険労務士事務所も対応しています
審査請求は自らやって棄却となってしまい、次は専門職に頼みたいと考える方もいるかもしれません。
弁護士、社労士が、再審査請求の専門職です。
当事務所代表田口英子は、弁護士、社労士であるため、再審査請求に対応しています。
社労士としての障害年金実務経験、弁護士としての主張立証実務経験、いずれも持ち合わせています。
”全国対応”しているため、どの地域の方も、お気軽にご相談ください。
また、上記にも記載したとおり、期限があるため、お早めにご相談頂けると助かります。
ご相談の際は、申請したときの書類や審査請求書、決定書のコピーを見せて頂けると、話がスムーズになるかとお思います。
当事務所への不服申し立てのご相談については、以下の記事をご確認くださいますよう、よろしくお願いいたします。


