裁決年(令和4・5年)|厚生労働省裁決年(令和4・5年)について紹介しています。www.mhlw.go.jp
厚労省のサイトに掲載されている、再審査請求裁決例をみての感想などを書いていきます。
下記記事はその1で、今回はその2(続き)です。
視覚、視力障害・棄却
原処分は、「障害の状態を認定することができない」とした却下処分をしました。
診断書作成した(?)医師の回答によると、
「視覚障害の程度と病状に解離がある印象です。」
「当院で検査した限りではここまで高度の視機能障害を来しうる原因の特定に至っておりません」
とあります。
そのため、審査会は、
「本件診断書に記載された視力および視野の状態について、そのまま本件傷病による障害の状態として
判断することは困難」
として、棄却しました。
脳梗塞後遺症、失語症 障害の程度 容認
原処分は、障害給付・障害手当金を支給しない処分としました。
言語の診断書(一部略して、下記、転記してます)では、
「会話による意思疎通の程度」は、
一番軽い「患者は、話すことや話を理解することにほとんど制限がなく、日常生活が誰とも成立する」
に○があり、発音不能な語音は記載なし、
他方で、標準失語症検査において、
聴くが39/40点、話すが65/70点、まんがの説明段階5/6、語の列挙14語/分、読む39/40点
と高得点であるにもかかわらず、
書くは19/35点、まんがの説明 段階2/6と著しく低い値を示している。
現症時の日常生活能力および労働能力は、
「日常生活活動は自立しており、日常会話は可能であるが、
言語機能的に喚語困難があって書字困難が目立つこと、
複雑な長文の発話や理解が難しいことについて
配慮があれば労働は可能」
とされていることから、
審査会は、
「請求人には、失語症、特に書字に障害が強くでており、
障害認定基準において、音声言語の障害の程度と比較して、
文字言語(読み書き)の障害の程度が重い場合には、
その症状も勘案し、総合的に認定するとされていることから、
このような本件障害の状態は、・・・障害手当金に・・該当すると判断できる。
その上で、
診断書には、症状固定日が記載され、「確認」に○、予後「改善は困難」とあることから
症状固定として、手当金支給されるべきとしました。
感想
言語障害は、「会話による意思疎通の程度」の1234段階のどれにチェックがあるだけで
等級が決まってしまいそうですが、
本件のように、音声言語が軽いけれども、書字障害が重い場合には、
診断書作成医療機関に標準失語症検査をしてもらって、書字障害の重さを
立証する必要があると感じました。
網膜色素変性症 社会的治癒 棄却
経過(病歴就労状況等申立書より)
小学校はいる前から見えづらさ、a病院受診、経過観察。
中学校で、盲学校へ編入。手帳取得(5級)。
盲学校高等部進学、あんま・マッサージ・指圧師免許取得。
受診を自己中断したけれども、視野が狭く感じ再受診。
審査会として、
「本件傷病は、その症状が緩徐に進行するものではあるが、
悪化する可能性は常にあるという性質を有するのであり、
本件記録によれば、現に請求人についても、
その症状が徐々に悪化していった経過を認めることができること、
本件傷病のように治療法のない疾病に対してであっても、
臨床上、医師において病状の悪化を診ることができ れば、
その悪化を少しでも遅らせるように、
そのときの状態に沿った対症療法を行うことができることにも照らして考えれば、
請求人が主張する昭和○年○月以 降について、
本件傷病に対して医療を行う必要がなかったということはできない」
感想
請求人が社会的治癒を主張している期間が何年なのかは不明ですが、
網膜色素変性症では、社会的治癒を認めさせるのは、だいぶ難しいんじゃないかとも
受け止めてしまうような内容です・・・。
というか、網膜色素変性症に限らず、傷病の特性が、上記理由付けのように、
「症状が緩徐+悪化する可能性が常にある」に当てはまるのであれば
社会的治癒の成立が難しい・・・ように思いました。