住所地を有していない者の保険料免除申請について

再審査請求 裁決集

行政文書情報販売店様より購入した、令和4年裁決取消集(不服申立て2審目の再審査請求で、取消=容認裁決を集めたもの)より。

事件番号は、令和4年(国)第96号です。

事案について

事案概要

請求人は、住所が職権消除され、拘置所に拘禁。保険料免除・納付猶予の承認申請をした。

これに対し、保険者は、請求人の住民登録がなく住所地が不明であるから、申請を却下処分とした。

これを不服として、審査請求・再審査請求し、審査会が原処分取消しし、容認された事案。

再審査請求で明らかになった事実

警察署長作成の証明書、審査会の照会に対する警察署回答、拘置所長作成の在所証明書で、警察署や拘置所に留置された期間が明らかになった。

保険料免除申請者が住所を有していなかった場合等の取扱い通知

○国民年金法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う事務の取扱いについて平成26年9月19日年管管発0919第1号

→通知は、厚生労働省サイト内の、「法令等データサービス」で検索をかけてくださいませ。

.被保険者が住所を有していなかった場合等の取扱い

(1) 前住所地が不明な場合

前住所地が不明で新たに住民登録が行われた被保険者(前住所地が不明で新たに住民登録が行われた配偶者についても同様。)から免除等の申請があったときは、住民となった日の属する月以後の期間について免除等の審査期間とすること。この場合、申請者等が基準内未申告者であるときは、上記2に基づく取扱いとすること。

(2) 矯正施設の被収容者である場合

矯正施設収容中の者(以下「被収容者」という。)については、矯正施設に収容中の期間(以下「被収容期間」という。)は住民登録がなかった期間であっても日本国内に住所があったと認められることから、(1)の取扱いにかかわらず被収容期間は免除等の審査期間とする(申請日時点において被収容者である場合の現年度分の免除等の申請については、免除告示期間の終期まで免除の審査対象期間とする)こと。この場合、免除等の審査においては、住民登録の確認に代えて、被収容期間に係る矯正施設の長の証明書(以下「在所証明書」という。)により免除等の審査が可能な期間であることの確認を行うとともに、当該被保険者が基準内未申告者であるときは、上記2に基づく取扱いとすること。また、被収容者であった者が住民登録のなかった期間について免除等の申請を行う場合においても在所証明書により遡及免除の申請が可能であること。

社会保険審査会の判断

審査会は以下の判断をしました。

拘置所在所期間は、矯正施設収容中であったと認められるから、免除の審査期間として扱うべきである。

都道府県警察の留置施設は、矯正施設の概念に含まれるとはいえない。しかしながら、刑事収用法15条、刑訴法204,205条により刑事施設に収容することに代えて警察署の留置施設に留置されているものについては、日本国内に住所があることは明らかであり、刑事施設に収容されるべきところを捜査の都合により同留置施設に留置させているのだから、矯正施設収容中のものと区別して取り扱う合理性はない。

として、保険料の免除審査期間として扱うべきとしました。

社労士として

なかなか出会う事案類型ではないかと思いますが、この通知や裁決の存在を頭の片隅において、相談者のアドバイスに対応できるようにしないといけないな、と思いました。