障害年金は、①裁定請求(いわゆる「申請」)→②不服申立て(審査請求と再審査請求があります)→③訴訟という審査の流れになります。
②の2審目である再審査請求で棄却となり、訴訟に進んで争いたいけれども、訴訟とはどのような流れになるのかご質問があるため、この記事では、原告側に弁護士代理人がついた場合の、障害年金訴訟の流れについて説明します。
原告=障害年金を請求した人
被告=「国」です。実際は、法務検事(法務省にいる検察官)が代理人になることが多く、法務検事は厚生労働省年金局職員と一緒に書面を作成しているようです。
障害年金訴訟(裁判)・第一審の流れ
(原告)訴状提出
原告から依頼を受けた、代理人の弁護士は、訴状を作成し、再審査請求書が届いてから6ヶ月以内に、地方裁判所に訴状を提出します。
訴状は、数十ページにわたり、証拠も同程度のボリュームになります。
被告である国は、答弁書提出
原告の訴状提出をうけ、被告である国は、答弁書を裁判所に提出します。もっとも、答弁書には提出期限があるため、三行答弁と言って、「請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。との判決を求める」という答弁書が提出されることが多いです。
その後の1~2ヶ月に、国は、訴状に対して認否やその理由を書いた準備書面を提出してきます。
準備書面の応酬
原告と被告とで、準備書面の提出が交互になされます。主張が出し尽くされるまでの、お互い3~5回程度準備書面を提出することが多いかと思います。
また、準備書面提出の度に、裁判期日が開かれるのですが、現在、裁判期日は、マイクロソフト社のteamsというウェブ会議で、裁判所、原告及び被告代理人の三者でのやりとりが行われるため、必ずしも裁判所の法廷に出頭する必要はありません。
当然、原告本人は、このビデオ会議に参加しなくても問題ありません(通常は原告は参加せず、代理人弁護士だけです)。
具体的に言うと、
被告(または原告)が準備書面FAX提出→その1週間後にWeb会議。
その場で、次回の期日(web会議日)を決めて、その期日1週間前に、原告(または被告)で準備を提出するように裁判所に言われる。
というのが繰り返されるのです。
期日は、準備書面作成の期間として2ヶ月間隔くらいに設定されることが多いです(民事訴訟だと1ヶ月ですが、行政訴訟だと、行政側の準備の都合上2ヶ月くらいになることが多いです)。
そのため、例えばお互い3回の準備書面提出の場合、3回×2(原告被告双方)×2ヶ月間隔=12ヶ月(1年)にわたり、準備書面の応酬があります。
本人・証人尋問
原告と被告との主張が出し尽くすと、本人尋問、証人尋問が行われます。ここまでと異なり、裁判所の法廷で行われます。尋問は必須ではなく体調次第で、原告代理人が請求することとなるのですが、証明責任が原告にある以上、勝訴判決を得るためには、本人尋問や証人尋問をしたほうが良いと私は考えています。
ここまでは、原告ご本人は、弁護士との打ち合わせやメール、電話のやりとりだけで良かったのですが、この段階で初めて、裁判所に行くこととなります。
最終準備書面
尋問後、原告被告双方、最終準備書面を提出することが多いです。これまでの主張をまとめた物を提出します。
判決
最終準備書面から2ヶ月程度で、判決が出されます。裁判所に出頭する義務はなく、後日、判決書が届き内容を確認することができます。
最初の、訴状提出から、1年半くらいかかることが多いです。判決に納得いかない場合、控訴することができます。
裁判にかかる費用
裁判には以下の費用が発生します。
1.収入印紙
訴訟額によって異なります。東京地方裁判所の場合の早見表をご確認ください。
2.郵券
3.弁護士への着手金、日当など
各弁護士によって異なるため、依頼したい弁護士にご確認ください。
最後に
以上、裁判のイメージがつかめましたでしょうか。裁判というと、刑事裁判を描いたドラマを連想し、毎回裁判所に行かないと行けないから大変だと思っている方もいるようです。
原告の方は、弁護士との打ち合わせは何度かやらないと行けないのですが、裁判所に行くのは尋問の日の1回だけとなります。
なお、弁護士は、合計100ページ以上の書類を作成することとなります。
再審査請求での容認率が低く、そして、中身のない審査が多い現状(これについては別記事で作成する予定です)
再審査請求の結果において、納得いかない場合、訴訟に進むことも前向きにご検討頂けたらと思っています。