令和6年障害年金裁判例のご紹介

裁判例

はじめに

当事務所においての、障害年金訴訟の相談者様から、
「裁判に行っても、認められない(敗訴になる)」
と、相談者様の不服申立て代理人の社労士(障害年金業務のベテランの先生)から言われた、とのご相談がありました。

果たしてそうなのか、私の感覚だと、「不服申立てよりも裁判の方が認められるのでないか」、と感じました。
といっても、単に肌感覚だけだとなんら説得力が無いため、障害年金の裁判例を調べてみました。

そして、ここで、裁判例をご紹介することにします。まずは、令和6年(1~12月分)ごご紹介します。以降、令和5年以前分と過去に遡って紹介する予定ですのでよろしくお願いしますm(_ _)m

社会保険労務士向けの専門的な記事となります。

網膜色素変性症の障害の程度 全部認容

大阪地裁令和6年1月18日判決です。

以下、概要です。

網膜色素変性症である原告が障害厚生年金・障害認定日請求、予備的事後重症請求をしますが、認定日が1、2、3級に該当しないとして不支給決定をしました。予備的事後重症請求に対しては3級としました。

認定日不支給に対し、審査請求・再審査請求するも、いずれも棄却。提訴となりました。

被告である国は、なんと、3級には、認定基準の「両眼視野2分の1以上欠損」だけでなく、労働制限も必要だといった、過重に要件をつけてきた主張をしてきました。

当然裁判所は、障害認定基準では、両目視野2分の1以上欠損が該当する場合に、さらに労働制限まで必要とは読めないとして、被告主張採用できないとしました。

当然すぎるほど当然の判決内容だと思うのですが、これを社会保険審査官や社会保険審査会が棄却したことが不思議でなりません。

額改定請求の遡及 棄却

令和6年2月21日東京地裁判決です。

うつ病で2級の障害基礎年金・厚生年金を受給していた原告が、平成29年の更新では、同じ等級である2級となりました。この更新の結果が出る数ヶ月前の平成30年、平成29年3月現症日診断書を提出して、遡及しての額改定請求をしました。
これに対し、厚生労働省は額改定請求に必要な診断書の添付がない(※額改定請求日から3ヶ月以内現症日診断書が必要とされています)ことを理由として、額改定をしない処分をしました。
これに対し、原告は審査請求をするが棄却、再審査請求も棄却として提訴となりました。
なお、原告は、令和元年4月、同年3月現症日診断書を添付して、額改定請求をしました、額改定ならずの処分となり、審査請求・再審査請求棄却となりました。

裁判所は、令和元年額改定請求については1級認容、平成30年額改定請求については棄却・却下としました。後者について原告は控訴しますが、高裁は棄却、判決確定となります(前訴)。

本訴は平成30年不改定処分は、無効だとするものですが、裁判所は、既判力に抵触するとして、棄却しています。障害の程度の争いというわけではなく、民事訴訟法の問題といえるのですが、一応、障害年金関係の訴訟としてご紹介させていただきました。


支給停止の遡及解除  一部認容

大阪地裁令和6年3月13日判決です。

以下、概要です。

統合失調症により障害年金2級受給していた亡Aさんが、平成19年以降、障害状態確認届(いわゆる更新の診断書)を提出せず、長年、障害年金が停止となっていました。
Aさんが令和元年死亡後、Aさんのご遺族が、平成19年から令和元年の12年分の障害年金・未支給年金を求めますが、厚生労働省は、平成19年以降の診断書の提出がされず、障害状態を確認できないとして、未支給年金を支給しない処分をしました。

審査請求、再審査請求、いずれも棄却を受けての、提訴です。

裁判所は、平成19年以前の経過から、診断書がなくても、平成19年から令和元年までの間、障害状態2級程度であったと認められる、としました。
平成19年から平成27年5月までも部分は時効により消滅し、平成27年6月以降令和元年の5年分を支給しないとするのは違法としました。

一部認容としましたが、実質全面勝訴といえる判決ではないかと思います。

脳脊髄液減少症 障害の程度 全部認容

令和6年4月19日、東京地裁判決です。
以下、事件の概要です。


原告は傷病名脳脊髄液減少症として、障害厚生年金・障害認定日請求をしますが、提出された診断書では、認定日当時の障害の状態を認定できないとして、却下処分となります。予備的事後重症請求では2級となりました。

却下処分に対する審査請求・再審査請求、いずれも棄却となり、提訴となりました。

なお、障害認定日は平成14年12月ですが、提出されたのは、平成20年現症日診断書です。

裁判所は、これまでの治療経過から(平成20年から平成26年の間に、ブラッドパッチの影響で一時的に改善すしたが)認定日の頃は、請求日と同程度の2級としました。



以下、後日、続けて、一型糖尿病集団訴訟・大阪高裁判決、知的障害診断書なし札幌地裁判決を書いていきます。
しばしお待ちください。