初めて1,2級請求とは
この記事は、障害年金請求の種類の一つ、「初めて1、2級請求」について解説していきます。他の請求方法に比べると、使用頻度は少ない制度となります。
要件
「初めて1、2級請求」という請求の要件を見ていきます。
1.「基準傷病」の初診日において、年金制度の被保険者か国内在住の60~65歳であった
いきなり「基準傷病」という専門用語が出てきました。
「初めて1,2級」請求というのは、複数傷病がある場合の請求方法の一つです。そして、「基準傷病」というのは、複数傷病のうち、一番後ろに初診日がある、傷病となります。
例を挙げると、初診日が時系列順で、①喘息、②狭心症、③胃がん、だった場合、③胃がんが「基準傷病」となり、①喘息②狭心症が「基準傷病以外の傷病」となります。
もっとも、複数傷病ある場合でも、年金請求に使わない傷病(つまり日本年金機構に対して診断書を提出しない傷病)においては、「基準傷病以外の傷病」とは考えません。
そして、基準傷病の初診日において、年金制度の被保険者か、国内在住の60~65歳であることが要件となります。
2.「基準傷病」の初診日までに、一定の年金保険料を納めいてた
他の請求方法同様、年金保険料を一定程度、納めていることが要件となります。
3.「基準傷病以外の傷病」と、「基準傷病」とを併合して初めて、2級以上になる。
基準傷病以外の傷病ではこれまで一度も2級以上になったことがないことが条件です。
そのため、例えば、上記例だと①喘息においてて、過去2級で、その後軽快し、今は3級となった場合においては、初めて2級の対象にはなりません。
ここで、例えば、①喘息→②うつ病の順で病気になり、②うつ病単体でも2級相当、①喘息と②うつ病を併合しても2級相当の場合には、「初めて2級」の請求ができるか、検討します。
結論から言うと、「できない」と考えています。
仮にできる、となってしまうと、①とても軽い花粉症→②うつ病の場合にも初めて2級請求ができることとなります。つまり、事後重症請求は65歳までしかできないことから、何かしらの軽い病気をつけて、65歳以上の請求が可能にさせてしまうのです。
同様の考えで、同じ例で、①喘息→②うつ病の順で病気になり、①うつ病単体で1級相当の場合、初めて1級請求もできないと考えています。
なお、同業の社会保険労務士の方から聞いた情報ですが、その方が旧社会保険庁に同様の質問をしたところ、上記と同じ回答をもらったとのことでした。
まとめると、以下であると考えています。
初めて2級請求=①基準傷病以外で2級未満、②基準傷病単独では2級未満、①②これら併合して2級
初めて1級請求=①基準傷病以外で2級未満、②基準傷病単独では1級未満、①②これら併合して1級
もっとも、日本年金機構が、厳密に、基準傷病以外がどういった等級で、基準傷病がどういった等級で、というのを検討しているとは、実務上あまり感じられません。
4.基準傷病の障害認定日以後65歳誕生日前々日以前に、上記3.の2級以上になった
2級以上の障害の状態になるのは、基準傷病の障害認定日以後、65歳より前である必要があります。
65歳より前ですが、正確には、65歳誕生日前々日以前です。たとえば、5月11日誕生日の人は、5月9日以前となります。

図は、「厚生労働省 第5回社会保障審議会年金部会説明資料」より引用
請求時期・支給開始時期
受給権発生時期と支給開始時期とが異なるのがこの制度の特徴です。
たとえば、令和5年1月に障害状態2級になったこととして、令和7年5月に初めて2級の請求をしたとしても、受給権自体は令和5年1月に遡るのですが、支給時期は請求月翌月の令和7年6月となります。
また、請求自体は65歳以上でもできるのも特徴的です。